2006年11月 6日 (月)

製品レビュー:トリプル3機種の比較(3)

3.吹口の間隔

トリプル・オカリナで気になるのは、和音を出せるかどうか、その関連で吹口の間隔がどうなっているかです。3機種の吹口を較べてみました。

3triplesmouth             吹口の左端と右端の間隔(注)
(上) トヒャン     37.5mm
(中) マパラム     40.0mm
(下) イカロス     29.5mm


(クリックすると拡大表示されます)

                    (注)正確に言えば、低音部の吹口穴の左端と高音部の吹口穴の右端まで。

トヒャンとマパラムは、吹口の間隔が広いので、単音を吹いている際に間違って隣の吹口から音が出てしまうという危険性が少なく、中級者にも吹きやすいですが、反面、和音を出そうとすると吹口を大きくくわえなければなりません。

なお、マパラムは、トリプルは音域拡張が主目的である(和音はおまけでありサポートしない)との立場であり、そのため吹口の間隔も意図的に広く設計しています。

イカロスは、吹口の間隔が狭いので、単音を吹いている際に間違って隣の吹口から音が出てしまうという危険性が高く、中級者には吹きにくいですが、吹口のコントロールがうまくできれば、和音を出す際にも吹きやすいです。

結果的に、イカロスは生産量も少なく演奏者を中心に供給されているので上級者向け、マパラムやトヒャンはホームページ上で市販しているので中級者向け、という棲み分けができるように思います。

4.まとめ

楽器の音色については文章では説明しきれないので、あくまでも外観からの比較です。

3tripless_2  (クリックすると拡大表示されます)

サイズに関して言えば、長時間演奏する場合には大きく重いトヒャンは負担が大きいですが、実際にはトリプルで何曲も続けて演奏することはプロの公演でも少ないので、吹く人の手の大きさや好み次第でしょう。厚みに関連する持ちやすさについても好みの問題です。

吹口に関して言えば、初めてトリプルに接する人にはマパラムやトヒャンが吹きやすいですが、将来的に和音も吹きこなしたいという意欲と能力がある人にはイカロスが吹きやすいでしょう。

中音部の運指に関して言えば、イカロスとトヒャンは右手親指を運指に使いますが、マパラムは右手親指を運指に使わず、右手の人差し指で2つの穴を押さえ分けるようにしています。どちらが楽かは好みの問題でもあり慣れの問題でもあります。初めてトリプルに接する人には楽器の表側で完結しているマパラムの方が吹きやすいでしょう。また、トヒャンの「中音部でレを出す穴」などの工夫は、様々な曲に挑戦する人には魅力的でしょう。

韓国製のマパラムとトヒャンを一言で言えば、イカロスを意識しつつ改良を加えたトヒャンは上級者に近い中級者向け、独自のデザインで軽量かつ運指の楽なマパラムは初級者に近い中級者向け、という気がします。しかし、実際には大量生産しているトヒャンがマパラムの半値以下で市販されていますので、はじめてのトリプルとしてトヒャンに接する人も多いと思います。

いずれにせよ、今後「トリプルでしかできない演奏」を聞く機会や「トリプルでしかできない曲の楽譜」が増えなければ、高価な楽器を使いこなせずに挫折する人が続出するでしょう。トリプル・オカリナの将来は、単なる物珍しさを超えた魅力を感じる人がどのくらい現れるかにかかっています。少なくとも韓国においては、トリプル・オカリナが物珍しさを失うまでの時間は余り残されていません。

 

 

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2006年11月 5日 (日)

製品レビュー:トリプル3機種の比較(2)

2.本体の厚み

オカリナ本体の厚みは持ちやすさに影響します。丸っこい(本体が厚い)ものが持ちやすいという人もいれば、平たい(本来が薄い)ものが持ちやすいという人もいます。トリプルオカリナ3機種を較べてみました。

3triplesup_2                 厚み
(上) トヒャン  42.0mm
(中) マパラム  41.5mm
(下) イカロス  46.0mm

(クリックすると拡大表示されます)

単純に厚みを較べると
マパラム < トヒャン < イカロス
となりますが、私が手に持った印象では、マパラムは厚く、トヒャンは薄く感じられました。おそらく写真でもそう見えると思います。

マパラムは丸っこく(横幅が短く先端が急に細くなっている)、トヒャンは平たい(横幅が長く先端は徐々に細くなっている)ので、そう感じるのでしょう。

イカロスは数字上も厚いですし、先端もあまり細くならないので、大袈裟に言えば長方形の箱を持っているように感じられました。

(続く)

 

 

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2006年11月 4日 (土)

製品レビュー:トリプル3機種の比較(1)

日韓のトリプル・オカリナ3機種が一堂に会する機会を得たので、比較してみます。
但し、以下の数値データはあくまでも手元にある個体の数字です。
(オカリナは大なり小なり手作りですので、個体毎に若干の違いはあります。)

1.全体のサイズ 

3tripless_1
                           横幅        重量

(上) イカロス(ICARUS) 15.3cm  270g

(中) マパラム(南風)    14.9cm  280g

(下) トヒャン(土香)    15.9cm  386g

 

(クリックすると拡大表示されます)

横幅(上記写真で言えば左端から右端まで)の長さは、
マパラム < イカロス < トヒャン
重量は
イカロス < マパラム <トヒャン
トヒャンの大きさが目立ちます。

あまり重いと長時間吹いた際に手が疲れてしまいますが、小さい方が好きか、大きい方が好きかは、吹く人の手の大きさにもよるでしょうし、好みにもよるでしょう。

(続く)

 

 

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2006年10月31日 (火)

製品レビュー:トヒャン トリプル

ボン・ミュージックがトヒャン(土香)というトリプル・オカリナの販売を開始しました。ノーブル・オカリナよりOEM供給を受けていますが、ノーブルのホームページでは販売されていません。マパラム(南風)オカリナのトリプルに続き、韓国で(おそらく世界でも)2番目にホームページで一般向けの市販を開始したトリプルオカリナです。

Dohyang  (クリックすると拡大表示されます)

低音部の構造はイカロスやマパラムと同様です。中音部はイカロスと同様に裏面に右手親指の運指穴がありますが、特徴的なのは、中音部表面に5つの運指穴(半音用の小穴を除く)が空いていることです(注)。普段は一番手前の穴は使用せず、残り4つの穴と裏面の親指穴で、「上のミ」~「上の上のド」を出します。

中音部表面の一番手前の穴を何に使うかと言えば、右手の5本の指を全部使って「上のミ」を出している際に、楽器保持の為にしか使われていない左手の人差し指を伸ばしてこの穴を押さえると、「上のレ」が出ます。つまり、このオカリナでは低音部でも中音部でも「上のレ」を出すことができます。

製作者(ノーブルの社長)によると、これにより、イカロスやマパラムでは困難な「上のレ」と「上のミ」のトリルが楽に出来るということです。トリルに限らず、「上のレ」が低音部の運指でも中音部の運指でも出せるのであれば、曲の中での運指の自由度は増えます。

Dohyangback  (クリックすると拡大表示されます)

高音部では右手親指は使いません。(中音部と高音部の裏面先端にある穴は調整穴です。)高音部では表面の4つの運指穴(半音用の小穴を除く)を使って、「上の上のド」~「上の上のソ」を出します。ここでも、製作者の意図により、中音部と高音部の双方で「上の上のド」が出せるようになっており、運指の自由度を高めています。

(注) 大沢音楽工房のブログに掲載されているトヒャンの写真では、中音部で出す「上のレ」の運指穴の位置が違いますが、機能は同じです。販売元であるボン・ミュージックのホームページに掲載されてる写真も当ブログと同じ位置です。

 

 

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2006年10月15日 (日)

製品レビュー:MAPARAM トリプル(4)

ダブルオカリナやトリプルオカリナについては「複数の吹口を同時に吹けば和音が出せるか」が気になります。現に、日本のトリプルオカリナ演奏者は演奏中に和音を出したりしています。

私もマパラムで和音を楽しんでいます。まだ入手して間もないので吹きこなすには至っていませんが、普通に曲を吹いて最後の終止音だけを和音で伸ばすとか、賛美歌を吹いて最後の「アーメン」だけを和音にするとか、・・・これは非常に楽しいです。

しかし、マパラムの作者は和音を保証・サポートはしていません。あくまでも目的はオカリナの音域拡張であり、和音よりも滑らかな音域拡張を優先しているそうです。

マパラムの作者の個人ホームページに、まだトリプルオカリナを開発中の頃に書いた「3連オカリナについて」という書き込みがあります。この中で和音について述べている部分を、作者の説明を要約する形で紹介します。

--------------(ここから紹介)--------------

どの音でも和音が出せるようにするには、全ての音を同じ呼吸量で出すように作らなければなりません。これは現実的には不可能です。

和音を出すことだけを目的に特殊なオカリナを製作することは可能でしょうが、一般的なオカリナは高音になるほど徐々に呼吸量が強くなります。私の作ったオカリナも同様です。呼吸量の増え方が急激にならないよう作っていますが、低音部と中音部の呼吸量はかなり違います。また、低音部から中音部に移動する際にも呼吸量の断絶が生じないように調律してあります。

したがって、理論的には低音部と中音部できれいな和音が出ることはありません。すなわち、低音部と中音部の音を出す際の呼吸量が違うので、同じ息で同時に双方の音を正しい音程で鳴らすことはできないのです。

しかし、実際には、面白い現象が現れます。二つの吹口を同時に吹く場合(一つの吹口を吹くときよりも強く吹く必要があります)、息は二つの吹口で分離して二つの気道を流れるのですが、低音部の気道よりも中音部の気道が少し狭いため、低音部よりも中音部の方に大きな圧力がかかっているようです。そのため、二つの吹口を同時に吹けば(低音部を弱めに、高音部を強めに吹いたのと似た効果が得られて)低音部と中音部で和音に近い音(誤差20セント以内)が出ます。しかし、その誤差は音の組み合わせにより異なり、演奏で使える組み合わせは限られています。

--------------(紹介終わり)---------------

そういう訳で、マパラムでは和音の保証・サポートはしていませんが、少なくとも普通の人を驚かせる程度の精度であれば出ますし、また、ここぞと言うときの一音であれば、ふさいでいる運指穴を少し開けたり又は開放している運指穴の上に指をかざしたりといった微調整できれいな和音を出すことも可能です。

自分の演奏したい曲で、どこだったら和音を使えるか、どこで使えば効果的か・・・考えるのは楽しいですが、曲全体の練習がおろそかになると本末転倒なので気を付けねば。

 

 

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製品レビュー:MAPARAM トリプル(3)

裏面はこうなっています。

Maparam12  (クリックすると拡大表示されます)

ご覧の通り、3つの歌口以外には、低音部の左手親指の運指穴があり、また中音部と高音部の先端にそれぞれ調整穴が空いています。つまり、調整穴は中央部、高音部とも裏表に一つずつ空いていることになります。

作者のホームページの掲示板に「この穴は何ですか?」という書き込みがあり、それに対して作者が詳細に考えを述べています。作者の説明を要約する形で紹介します。

--------------(ここから紹介)--------------

オカリナの響きは他の楽器には出せない魅力的なものですが、楽器としての最大の短所は音域が狭いことです。これまで多くの人が研究しましたが、低音部と高音部の音量と音色が大きく異なるため、イタリアと日本で市販されたことはあるが普及はしていません。

このような状況で作者は闇雲にトリプルオカリナに挑戦しました。成功するという保証もなく、ダブルオカリナとトリプルオカリナに対する製作技術も全くない状態で、ひたすら研究するしかなかったです。

最初は音程のみを合わせようとしました。これはそれほど難しくありませんでしたが、しかし低音部と高音部の音量と音色は全く違いました。これらを近づけるために、オカリナに調整穴を空けることができる所には全て空けてみながら研究しました、その結果、一番似ている音を出すために穴を空けなければならない位置が分かりました。それが表面の先端と裏面の先端よりやや中央よりの穴です。

裏面に2つの穴を開けても同様の効果が得られますが、表面の先端に空けたのは楽器の拡張性を考慮したからです。この調整穴を演奏で使うことはありませんが、この穴を押さえて強く吹けば拡張音(運指表に記載されていない倍音)を出すことができます。運指を工夫すれば複数の拡張音が出ますが、保証・サポートはしていません。

今後、オカリナの製作者であれば誰もがダブルオカリナに関心を持つようになり、様々な新しいダブルオカリナが誕生すると思います。それがオカリナの発展にどのような影響を及ぼすようになるか、期待しています。

--------------(紹介終わり)--------------

 

 

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2006年10月12日 (木)

製品レビュー:MAPARAM トリプル(2)

マパラム・トリプルの運指については製作者サイトの運指表(低音部中高音部)を参照して下さい。以下、必要に応じ運指表を参照しつつ読んで下さい。

このオカリナでは左手の親指は運指に使いますが、右手の親指は運指に使いません。作者によれば、右手の運指(低音部-中音部-高音部)を滑らかにするためには、親指は楽器の支えに専念させて運指穴は表側に集中させた方が良いとの判断だそうです。

中音部の人差し指が2つの穴を押さえるようになっていますが、これにより、中音部は指4本で「上のミ」から「上の上のド」までをカバーします。本来ならば中音部の右手親指が受け持つべき「上の上のド」の穴を表側に空けた、とイメージすれば分かりやすいかもしれません。

中音部の先端付近の穴は調整穴です。高音部の先端付近の穴も調整穴です。調整穴についても作者なりの理由があって空けている訳ですが、これを説明する前に、裏面に調整穴が空いているか否かを見てもらった方がよさそうですね。明日、裏側の写真もアップしてから説明することにします。

 

 

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製品レビュー:MAPARAM トリプル(1)

マパラム(南風)オカリナのトリプルは、韓国で(おそらく世界でも)初めてホームページで一般向けの市販を開始したトリプルオカリナです。

トリプルオカリナといえば日本の「イカロス」が先駆者として韓国のオカリナ愛好者の間でも知られています。しかし韓国での入手は困難なので、耐えかねた愛好者が見よう見まねで作りはじめ、ついに市販にまで至りました。

日本のイカロスに敬意が払われている一方、マパラム・トリプルはイカロスの単なる模倣ではなく、製作者のトリプルへの思い入れと理論が随所に反映されています。

とりあえず今日は表側の写真のみ。追って詳細を説明します。

Maparam11  (クリックすると拡大表示されます)

 

 

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2006年10月11日 (水)

製品レビュー:はじめに

韓国のオカリナ製作者について一通り紹介が終わりました。引き続き追加や更新は時々あると思いますが、次のテーマとして具体的な製品紹介を幾つかやってみます。
本来は韓国のオカリナ愛好者事情について書こうと思ったのですが、その前に、具体的な製品レビューの要望が高いので、やってみます。
(まずはマパラムのダブル・トリプルとジンのプラスチック。その他に関心ある製品があればリクエストしておいて下さい。)

このブログでの製品レビューに関する方針は以下の通りです。

「オカリナ自体に良し悪しはないが、吹き手との相性の良し悪しはある」

オカリナは製品自体にも吹き手にも大なり小なり個性があり、両者の間には「相性」があります。形状然り、運指穴の位置然り、呼吸量然り、音色然り、その他いろいろ…。
自分に合ったオカリナは「相性が良い」ですし、合わないオカリナは「相性が悪い」です。

でも、自分に合ったオカリナが一般論として「良い」とは限りませんし、自分に合わないオカリナが一般論として「悪い」とは限りません。自分に合ったオカリナでも他の人には合わないことがあるし、自分に合わないオカリナでも他の人には合うこともあるからです。

もし100人の吹き手がいて、その誰とも相性が悪いオカリナがあれば、それは一般論としても「悪い」オカリナなのかもしれません。しかし、100人の吹き手がいて、一人でも相性が合う人がいるのであれば、それは「個性が強い」オカリナであっても「悪い」オカリナではありません。

そういう訳で、私は個別のオカリナ製品に対して良し悪しの評価はしません。自分との相性の良し悪しは書けますが、私との相性がその楽器の良し悪しを意味するものではないことを予めお断りしておきます。

 

 

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